アメリカ軍には陸軍、空軍、海軍、海兵隊と4軍ありまして、陸海空はなんとなく何やってるのかわかるけど、海兵隊って何やってるのかよく分からないですよね。「海兵隊についてわかりやすく解説」って書いてあるサイトですら分かりにくい(笑)ので、本当にわかりやすく解説したいと思ってページを書いています。それでもわかりにくかったらごめんなさいね。

海軍と海兵隊の役割→仮に北朝鮮を攻めるなら

あくまで「仮に」ですよ。仮に。まずは米軍が北朝鮮を日本海から攻めるとしたら、どんな順番でどの軍が動くのか、解説したいと思います。その流れを知ることで海軍と海兵隊の役割がわかりやすく理解できると思います。正確性よりもわかりやすさ重視なので、かなりざっくりしているかもしれませんので、変なツッコミはなしでお願いします。核ミサイルとかは今回は議論に入れません。

1.まずは海軍が制海権を取る

何はともあれ、まずは海軍が日本海の制海権を取らないと話になりません。いわゆる空母打撃群で戦闘機を中心に、駆逐艦、護衛艦、潜水艦などでとにかく海の覇権を取ります。太平洋戦争のときの日本も制海権を奪われたために、補給もできず、他の地域を攻め入ることもできず、負けちゃいました。

 

海軍の空母打撃群。かっこいい!!!

2.海兵隊が上陸拠点を作る

ここで出ました海兵隊。海軍が制海権を取った海を渡り、海兵隊が上陸作戦を展開します。海軍って実は、船動かしたり、飛行機飛ばしたりは得意だけど、陸上攻撃能力がほぼ皆無なんです。なので制海権を取っても、肝心の陸上には攻め入ることができません。そこで陸上攻撃能力を持った海兵隊が上陸して拠点を作る、つまり沿岸の一部の地域を占領するのが海兵隊の約目です。

 

イメージ的にはこんな感じです。ビーチから上陸することが多い。

実際に上陸する前に、航空勢力で周りをあらかた敵を排除してからということになります。

3.陸軍が拠点から上陸して占領する

海兵隊が作った上陸拠点から、大兵力でどんどん上陸して、敵国の全土を占領していくのが陸軍の役目。その際、空港も接収して空軍の拠点も作ります。

実際、イラク戦争も同じような流れで進みました。最終的にフセイン大統領を捕らえたのは陸軍です。

海軍と海兵隊の装備の違い

というわけで、だいたい海軍と海兵隊の違いが分かっていただけたと思います。おさらいすると海軍は制海権の確保、海兵隊は上陸作戦ですね。なので持ってる武器も全然ちがいます。

海軍は正規空母が中心

海軍の場合は制海権を取るのが目的なので、正規空母です。航空機が75機以上搭載できます。空母を中心に巡洋艦、駆逐艦、補給艦、潜水艦などで空母打撃群を形成します。

海軍の航空機は戦闘機(対航空機)

海軍の航空勢力は、制海権を取るための制空権を取るのが仕事になってくるので、敵の戦闘機をやっつける戦闘機が主戦力になります。写真はF35Cです。対艦ミサイルも搭載できますが、基本的には対空ミサイルに比重を置いた装備です。

海兵隊は強襲揚陸艦

海兵隊も空母を持っていますが、強襲揚陸艦と呼ばれる軽空母です。読んで時の如く突然襲って陸に揚がるための船です。後ろにあるゲートから揚陸のためホバーなどを出します。写真はワスプ級。

海兵隊の航空機はいろいろ

海兵隊は上陸作戦の際に敵を排除しなくてはならないので、いろんな航空機が必要になってきます。

対空戦力はやはり戦闘機。ただし強襲揚陸艦は正規空母と比べて小さいので、垂直離着陸が可能な戦闘機を搭載します。写真はワスプ級に搭載予定のF35B。この前はハリアーなどが搭載されていました。対空戦力とはいえ、対地ミサイルも搭載することが多いです。

 

対地戦力は戦闘ヘリが主力。陸上にいる歩兵や戦車、建物などを攻撃します。写真はAH-1Z ヴァイパー。

 

ヘリボーン(ヘリコプターによる兵隊の展開:空挺作戦、早い話が兵隊を運ぶ)を行うので輸送ヘリやオスプレイも搭載。

海兵隊には陸上戦力もあり

陸軍ほど大舞台ではありませんが、制圧のための陸上戦力も海兵隊は持ってます。

他にはこういう水陸両用の装甲車や・・・

 

戦車

 

人をいっぱい運ぶ船もあります。

海兵隊=殴り込み部隊

海兵隊は別名として殴り込み部隊と言われています。言ってみれば玄関を突き破って突入するようなものですから、その異名も納得。しかも本当の戦闘になるとかなりタフなので、訓練もそうとう厳しいようです。アメリカ四軍の中で最も気性が荒いと言われています。陸軍もそうですが、海兵隊は戦闘になると体を張りますからね。しかも海の上にいるプレッシャーも相当なものらしく、どうしても気性が荒くなるようです。海の上という意味では海軍も過酷。空軍はパイロット以外は直接戦闘に関わらないので、比較的訓練もゆるいようです。

どこの国でも他の軍同士、仲が悪いのは常識のようですが、上記のような理由もあって、特に空軍と海兵隊って仲悪いんですって。空軍は海兵隊のことを脳筋と言って馬鹿にするし、海兵隊は空軍のことをひ弱なお坊ちゃまとして見ています。沖縄で嘉手納基地(空軍)と普天間基地(海兵隊)の統合案が持ち上がった際、沖縄在住の人が「嘉手納と普天間、統合なんてしたら基地内で戦争が起こる」って言ってました(笑)。

沖縄の米軍はほとんど海兵隊

沖縄県の米軍基地のほとんどが海兵隊の基地です。比較的大きな嘉手納基地は空軍、ホワイト・ビーチ地区に海軍、あとトリイステーションと呼ばれる陸軍の通信施設がありますが、あとはほとんど海兵隊。各群の構成人数はこんな感じです。

人数 割合
陸軍 1,547人 6.0%
海軍 2,159人 8.4%
空軍 6,772人 26.2%
海兵隊 15,365人 59.5%

実に米軍の6割が海兵隊員。気性が荒いと言われてますので、今の沖縄で米軍絡みの犯罪が注目される現状も納得できますね。。。

アメリカ以外の海兵隊

実は海兵隊という軍隊はそれほど多くの国が持ってるわけではありません。しかもほとんどが海軍の指揮下に置かれています。独立した大きな組織としての海兵隊は米軍だけが持っていて、言ってみれば贅沢な軍隊と言えるでしょうね。日本も自衛隊版の海兵隊と言われる「西部方面普通科連隊」が陸上自衛隊に創設されています。

 

というわけです。だいたい分かってもらえたような気がします。ちなみに昔の軍隊では「海兵」は船に乗り組む戦闘員、「水兵」は操船などに携わる乗組員と役割が分けられていました。海兵隊っていう呼び方はその時の名残のような気がします。